1.2 ― 尊厳

「尊厳は
静かな時の中に、そっと在る。」



やがて人は悟る。
あまねく世界において。

共同の営みは
円(えにし)より生まれ、
人をかたちづくり、
しかも各々の内に
尊き宝を
そっと残すことを。

――尊厳(そんげん)


尊厳


人は互いを知る。
相手の尊厳によって。

尊厳は示される。
境界を尊び、
それを守ることにおいて。

時と空間を越えて、
それは保たれ、
色あせることがない。

それでも人は知っている。
自らはまだ
尊厳に足りぬのではないかという、
胸を苛む思いを。

別れの時が近づくとき、
尊厳の重さが明らかになる。
それは所有よりも、
影響力よりも大きい。

尊厳は
一つの生を越えて届く。

尊厳は深まる。
生きられた経験によって、
人が背負ってきたものによって。
――ただし、
砕かれなかったならば。

苦しみによって、
尊厳を奪われることによって、
かつて自分が何者であったかという記憶は、
やがて薄れていく。

それでも、
至るところで愛は生きている。
愛が主となるとき、
苦しみは力を失う。

そのとき、
尊厳は
ふたたび姿を現す。